前提が間違っていて、過程も適当きわまりなく、結論も首を捻るばかりなのに、クライマックスに向けてハラハラさせるわけでも、美しいシーンがあるわけでもグッとくるセリフがあるわけでもないのに、当時の狂騒が懐かしい*1わけでもなんでもないのに、それでもなお面白い、ということがありうるのが映画というものの懐の深さだ。いや不思議な話だ。
開き直った人は強いよねという話でもある。
そもそも、「フジテレビ×電通×東宝×小学館」かつ「ホイチョイ×君塚良一×広末涼子+阿部寛」で、理詰めでシリアスなものが出来上がると思う人はいない。
この組み合わせで何か作らなければならないとなれば、(作り手も、観る側も)深く考えないで、気軽に楽しめるものが最適解だということだ。
関わった人や企業は総じてこのようなことが言いたいのだという電波をキャッチ。
「氏ねだ消えろだ皆さん気軽に仰られるが、そんなわけにもいかないんですよ。誰だって何かしらして食ってかなきゃいけないわけだし、それにみんな、分かってるじゃないか。理屈で割り切って断定しまくって敵を見つけて排除していっても、結局どっちみち皆いつかは死ぬんだ。だったらそんな神経すり減らして生きるより、楽しく過ごした方がいいだろ?検証?反省?教訓?それって食えるのか?」
それはそれでひとつの考え方だ。いっそすがすがしい。ちょっとは考えても罰は当たらない気もするが、それをやったら本質が失われるのだ。脳内ソースで断言する。若さって若さって何だ?振り向かないことさ!
だいたいちょっと考えたら、バブルをどうにかしようとしたら、そもそも1990年3月に戻ったって手遅れもいいところな気がするよ。まあ1985年に戻ったところで打つ手などあるのかということでもあるけど。だいたい一官僚や一研究者や一レポーターが政府の方針をどうにか出来るかっつう。特にレポーターが大活躍とか、フジのマスコミ幻想も極まれりだよ。そもそも伊武雅刀は何の罪で捕まったんだ。
それにそもそもちょっとでも真面目に考えたら、近過去に行くタイムトラベルものでは大したこた出来ない。例えば人が大量に死ぬことを止めることは出来ない。だってやっぱりねえ、個人的にもし自分が現実に1990年に戻ったら「5年後の1月17日に物凄い地震が来るから神戸の人避難して!」ってことだけは言っときたいもんな。信じないだろうから「4年後の同じ日にロサンゼルスで地震あるから」とも言っておく。そんで自社さ連立政権を成立させないために何が出来るかも考える。でもって当時の阿部知子を探し出して理由も言わずブン殴る。…でもねえ、妄想するくらいは軽く出来ても、それを作品にするのはやっぱナシだと思うもんねえ。現実に死んだ人がいて、その死を受け止めざるを得なかった家族がいるわけだし。それもものすごく大勢。だからそれは出来ない。現実と映画内現実はスッパリ分かれ、大災害があったことすら話の中では一切触れられず、全然別のことを追究するしかない。
だからまあ、こういう近過去に行くお気楽なのか、遠過去に行って大ボラぶちかますのか、かのどっちかなんだろうな、タイムトラベルものは。
広末良かったね。ポケベルのCMでブレイクしていろいろあって携帯のCM降ろされたりした*2こと考えると感慨深いストーリーだよね。でも事務所というか本人のOKラインがよくわかんないね。競泳水着はアリ(でもすぐ、上に短めのウェットスーツみたいの着る)で、下着もショートパンツみたいなのはアリなんだよね。胸も80ないとは思えないけどなあ。ギリギリあるだろ。子供産んだし。
阿部ちゃんもいつも通り良かったなあ。手堅く笑いを取って、誰にも嫌われないよね。横浜出身っつうだけでも個人的に好感度マックス。よっ!「世界で最も『同じ雑誌*3の表紙を連続して飾った人物」!髪の毛が多少寂しくなっても大丈夫だ!
吹石一恵もおいしかったなあ。ほんと、眉毛濃くてソバージュだったよね。映画「ときめきメモリアル」で藤崎詩織演じてた時には10年後も女優続けてるなんて想像もつかなかったなあ。
劇団ひとりも香港映画の面白脇役みたいで良かったね。
君塚良一は今後ずっとこういうゆるいコメディー書いてりゃいいよね。書いてください。それ以外絶対書くな。死んでも。
「君の瞳に恋してる」は名曲だよね。魔法の粉みたいだ。
(以下小ネタに関するバレを含みます。というかもう、含んでるか)
- フジテレビの気持ちになって考えてみてもおもしろい。フジ史観というか。そう見ると「マネーゲームとか抜かす官僚上がりとか調子に乗ったデブとか超ムカツく。あいつらが全部悪いんだ。死ね死ね死ね」がテーマだよね。…まったく、345億円損したくらいで大人げないよね。
- 1989年は狂っていた。1995年も狂っていたし、2001年も狂っていたので個人的に6年周期で世界はおかしくなると思っていたけど、最近はサイクルが短くなっていると思う。
- ジュリアナ東京がオープンするのは1991年。
- 飯島愛がAVデビューするのが1992年。
- ラモスは1989年帰化したばかり。Jリーグは1993年開始。
- 八木亜希子は1988年入社。同期は有賀さつきと河野景子。
- 1990年当時の飯島直子はグラビアとキャンギャルやってた。「DAISUKI!」始まるのは翌1991年。ジョージアのCMは1995年。
- 母親に聞いたところ、実際にお札を振ってタクシー止めてたそうな。
- 痴漢にあっているところを偶然うちの生き別れの弟に助けられた近所の綺麗なおねえさん(俺と年齢近い)も試写で見たというので聞いたところ、当時どんな格好していたのかは全く覚えてないそうな。さすが「上書き保存」の国*4の人だ。
- 1990年3月30日に「11PM」が放映終了している。4月から「世にも奇妙な物語」開始。
- 確かに「ありえなくない?」はいつどこで流行り始めたんだろう。
- 1990年は勝新がコカインで捕まり、ローリング・ストーンズとポール・マッカトニーが初来日公演、太陽神戸三井銀行(のちにさくら銀行に、さらに三井住友銀行に)、ドラクエⅣ、紀子さまブーム、フジモリ大統領、校門圧死、クウェート侵攻、雲仙普賢岳噴火。
- B.B.クイーンズ「おどるポンポコリン」米米CLUB「浪漫飛行」たま「さよなら人類」リンドバーグ「今すぐKiss Me」PINK SAPPHIRE「P.S. I love you」THE BLUE HEARTS「情熱の薔薇」サザンオールスターズ「真夏の果実」ユニコーン「働く男」プリンセス・プリンセス「OH YEAH!」COMPLEX「1990」井上陽水「少年時代」徳永英明「壊れかけのRadio」沢田知可子「会いたい」辛島美登里「サイレント・イヴ」B'z「太陽のKomachi Angel」JITTERIN' JINN「にちようび」やまだかつてないWINK「“T”intersection〜あなたに戻れない〜」ドリームズ・カム・トゥルー「笑顔の行方」などが、流行った。
- だが、どこまで東京が発展しようとアレは三本も要らない。いや、ギャグでも要らない。
- それはそれとして、タイトルはよくないね。なんだろ、最近はあんまり語感のよくないタイトルばやりなの?