honkyochiblog

さようなら、はてなグループ…

2005年9月3日「クライマックス乱れ打ち」



09:00〜
目を覚ます。暑いテントを出て、隣のモーターホーム(先行組が借りた、冷蔵庫の壊れたやつ)で何か食べることにする。
窓と屋根があるだけで、エアコンかけなくてもけっこう涼しい。素晴らしい。
ハーゲンダッツのアイスクリーム、昨夜持ち込んだドライアイスの効果でまだ大丈夫だろうと思っていたが、溶けかかっているので慌てて食べる。ほぼ一人で。あとくそ甘いラズベリーパイも。自己責任で。朝から胸焼け気味。


10:30〜
折り畳み自転車を出して、砂煙にまかれながら遥か遠いエントランスに戻り、ボックスオフィス(プレハブ小屋)に並んで昨夜やりそこねた入場手続きやり直し。しかしパンフレットのみでチケットはなし。
それだけではもったいないので近くにあったオブジェと化したドラム缶に『結婚式場』と筆で書いた紙を貼って写真撮影。申し訳ないが、今から並ぶ人たちは我々の客だ。

ああ、続々とお客さんが。見ず知らずなのにありがとう。


13:00〜
組み立て式テーブルと緋もうせん*1その他の道具をカバンに詰めてカートに載せ、会場のいちばん奥、テンプル(寺院)付近へ。
お願いしているお坊さん(仏式の結婚式なのでお坊さんだ)、シアトル在住の静さんと打ち合わせ。シアトルでのお勤めはどういう感じなんだろう。
静さんは弟さんとふたり、明日4日テンプルが炎上してから、このすぐそばで護摩を始めるとのことで準備に余念がない。
まずもうせんを敷く。
テンプルを背後にしてまず司婚者(坊さん)が座り、その前に祭壇(というかそんな感じのもの)、そして坊さんと向かい合うように新郎新婦が座り、その背後に二手に分かれて参列者が並ぶ、その各々が座る位置に敷くのだ。
どう固定しようかという段になって止まったら「釘で打ちつけりゃええんとちゃいますかね」とトンカチでカンカンと打ちつけてくれる。ああ、申し訳ない。貴重な五寸釘を。

そうだよなあ、風がすごいんだから何かでしっかり固定しなきゃいけないのは明らかなのに。そこまで考えが及ばなかった。
式の直前に砂を掃くためのほうきも貸してもらうことに。もう何から何まで。てか、何でもある。すごい。
組み立て式テーブルを組み立て、その上にもうせんを敷き、じいさんの遺影、香炉などの仏具、三々九度用の銀の急須、などを並べる。
じいさんの遺影は、大学時代に同級生女子、キヨシさんがスタジオで撮ってくれたものだ。葬式の時に持ってきてくれた。
白い布を身にまとったじいさんがお祈りするように手を組んでこちらを見ている図。もうね、インドの行者みたいっていうか、(禿げてて白い髭だもんで)一歩間違えれば神。基本的には仏。

このネタ写真遺影の前で我々は誓う。完璧だ。何を誓うにしても。

続けてプリントアウトした式次第を見ながら静さん兄弟と進行を最終的に確認。やっぱ、司会進行もやってもらった方がいい(我々は参列者に背中を向けているし…)との判断でお願いする。土壇場ですいません。
「で、ここでこうして…」とかやっててふと振り向くと、背後のもうせんにパンツ一丁の白人のおねいさんがニコニコしながら正座している。パンツ一丁。さすが白人の中の人は立派な

  _  ∩
( ゚∀゚)彡
 ⊂彡

いやいや。「これはリハーサルです。5時になったら本番ですのでその時もどうかどうぞ」通じただろうか。
出来上がった祭壇に薄い星条旗柄のレジャーシートを被せる。場所が場所だけに盗られやしない(だろう)けど、吹き飛ばされないよう祈ろう。


14:00〜
キャンプに戻り、モーターホームの中で着替える…の前に習字用の紙に筆ペンで「誓いの言葉」(ネットで探してプリントアウトした)を書き写す。懐に入れるのだ。しかし何だかあまりうまく書けず、何枚もクシャクシャに丸めてやりなおす。だめだっ。書道で段取ったのに、この体たらくは何だっ。
どうにかそれっぽく書きあげ、和服に着替える。(ネットで探してプリントア(rした)着付けの仕方を見ながら。いやー袴の紐の結び方が複雑で覚えきれなかったんすよ。結び終わると十文字になるやり方が。
和服用肌着を着て、長襦袢を着て、着物を着て、袴を履き、羽織を羽織って白い羽織紐を着け、白い扇子を片手に持って完成。落語家だ。
はっはっは、予想通り、重いわ、黒いわ、言わずもがな暑いわで。
外は気温40度。はっはっは。妻は白無垢に綿帽子。白いのは太陽光線はじくからいいよなー。でも重ね着しまくりで、かつ裾が布団みたいに膨らんでるから中の人も大変だ。湿度の無さだけが救いだ。
これではさすがに自転車には乗れない。裾がからまるし、派手な動きは着崩れのもとだ。徒歩でテンプルまで行くしかない。
しかし綿帽子を被った場合の視界は著しく悪いそうな。そりゃそうだ。
<画像準備中>(画像はイメージです)
こんなだもん。パックマンみたい。「嫁ぐときの視界は狭い方がいい」と昔の人が考えたのだろうか。
履物も履物だし、スタスタとは歩けない。鼻緒が食い込んで痛くなってくる。
テンプルまでおよそ5キロ。相当遠くに感じる…いや、感じるも何も、5キロって新宿東口から皇居のど真ん中くらいまで。起伏も直進を阻むものも何もないけど、それでもかなりの距離だ。
式場への道半ばで気力体力食料と水も尽き、もはやここまでかと覚悟したそのとき、同じキャンプの眼鏡女子、toitoi(といとい)が浴衣を着用し自転車で追いつき「アートカーに乗せてもらえるよう頼んでみたよー」と。お、サンキュー。
会場内を堂々と走れるのは、レンジャーの乗る4WDと全裸の人が何人も奇声を発しつつ水浴びしながら後ろについてくる散水車とバキュームカー以外は芸術的に改造された車だけで、乗せてもらったアートカーもピックアップトラックを改造(たぶん。あまり原型をとどめていない)した、ピンク色のポワポワしたものだった(いや、紫色でゴツゴツしてたかも)。前からは見なかったので何を模しているのかはわからない(何も模していないこともありうる)。「なに、結婚するんだって」「はい、そうです。私たちは(r」「それはコングラッチュレーション。さあ乗って乗って」荷台に腰掛ける。京都から来たというヨシさんも乗り込んだ。ヨシさんはジャンベとかいう太鼓を叩いている、よく陽に焼けた痩せた人だ。式で叩いてくれるそうだ。アートカーが発進する。足をブラブラできる。地面がどんどん流れていく。履物を落とさないよう、振り落とされないよう気をつけよう。にしても快適だ。
<画像準備中>
と思っているうちにテンプルだ。「あ、すいません降ります降ります。ありがとうございましたー」
うわあ。何かすごいことになってる。
木と竹で出来た御輿がある。その周りに応援団風長ランに「神風」と書かれたハチマキに黒いマスクをした人と剣道着を着た人とバーニングマンのマークが背中に入ったオリジナルの裃*2を着て軍配を持った人とフンドシ一丁の人と法被を着た女子が何人も。他にも大勢いるけどとても一度に認識しきれない。「間違った日本OFF」の会場はここですか?
<画像準備中>
「うわーこれちゃんと乗れるようになってるんすね」「ええそうなんですよ。で、僕らどのへんからどうすればいいですかね?」「じゃえっとこのへんで降ろしてもらう、って感じで。俺は先導する感じでいいんですかね?」いいも悪いもないか。お手本もないし。
カートでお茶の道具を運んできたのはアメリカの大学で組織心理学だかを学んでいるというナフーさん。小柄な女性だ。「(お茶いれるの)30分くらいかかるからー、始めてるよー」「お願いしまーす」少し離れたところで道具を広げはじめる。


17:00〜
皆が位置についたところで、いよいよ式本番。数珠を左手にかける。

「式次第」

1.入場、仏前着座 参列者は式場の定められた席に、左右に各一列に正面を向いて順次着席します。

式場後方から、御輿に乗って妻が入場するのを先導する。「わっしょい!わっしょい!」この御輿、ロスアンゼルスから来たノゾミさんたちが作ったんだけど、そういえば、仏式の結婚式と、いやそもそも結婚式と御輿って一般的にはあんまり関係ないよね。「わっしょい!わっしょい!」

生贄を捧げる儀式かいな。ドンドコドットンドンドコドットン。(画像撮影・cabさん)

2.新郎・新婦、下座より入場。正面の席に。

御輿から降りた妻と並んで進み、履物を脱いでもうせんの上へ。裾に気をつけつつ正座し、振り向いて二人分の履物の向きを変え、正面を向く。

3.司婚者出仕、ただちに着座。
4.司婚者より開式のことば。

黄色い法衣を身にまとい、静さんが前に座る。ゴーグル装着済み。サイバーな感じだ。

5.一同その座で総礼*3


ナムナム。(画像撮影・cabさん)
これより断続的に、式場は砂煙に包まれます。ここプラヤの大地は、砂が固まっているので歩くたびに足が沈むとかはありませんが、細かい砂は少しの風で舞い上がるもんで、強い風が吹けばすぐに桶屋が儲かります。あっという間に視界は5mくらいに。

6.表白 讃仏のあと、司婚者、表白文を拝読。
7.念珠授与 司婚者は、卓上にかざってある念珠を、新郎・新婦の順に授けます。
 (新郎・新婦は式場へかけて来ていた念珠を司婚者へ差出します)

この辺からいよいよ儀式めいてきますよ。いや儀式だから当たり前なんだけど。
表白というのは、式の趣旨を説明するようなことですね。「うやまってーえ、もうすー」と締める、法事とかでもよく聞くあれ。

8.誓いのことば 「両人の誓いを求めます」と司婚者から言葉がかけられ、
 新郎は、懐中に入れている「誓いのことば」を読みあげ、新婦は、自分の名前のみ読んで誓います。

さきほど苦労して筆書きしたことば。
こんな感じ。

 誓いのことば
 「私達は、ただ今よりあたらしい生活の歩みをはじめるにあたり、
  今日までお育てをいただいた方々のご恩を忘れず、
  み仏の教えをみちびきとし、ともに力を合わせ励ましあって、
  清らかな家庭を営むことを誓います。
                     2005年 9月3日」

ほぼネットで探した情報だけで式挙げてるのが何とも21世紀的。
懐に入れてからも下着の方までズリ落ちたらおいしすぎると何度もこっそり確認してたのは内緒だ。

9.式杯 次に三々九度の杯事が行われます。

平日はキャバクラ雑誌の編集、土曜日は巫女をやっているスーパーヒーラー(と、妻と妻の友達が呼んでいる)・イワセが巫女の格好で盃を渡し、謎の美女・鉄夫*4がキモノ姿でお酒を注ぐ。

最初の杯(さかずき)を受け取って、注いでもらった酒を飲んだら一旦返し、それが新婦に渡され、酒を注いで…と、新郎→新婦→新郎の順番で飲み、次の杯を新婦→新郎→新婦、最後のを新郎→新婦→新郎と、二人で三つの杯で九回酒を飲む流れ。
変わらず襲い掛かる砂で飲み口はザラザラしている。イワセが袂で拭いてくれるものの、追いつかない。でもまあ砂を飲み込んでしまうことに抵抗を感じているようではここでの生活はおぼつかないぜ。
三枚重ねの朱塗りの杯は実家にあったのを梱包して持ってきた。

10.司会者が「式杯」を宣しますと、参列者は、席のまま向かい合って対座します。
 夫婦交杯が行われ、一同に杯がくばられ、一同乾杯して式杯を終わります。

参列者一同に杯をくばり…とあるものの、白い杯がそんなたくさん家になく、近所に売ってなく、探す間に「…買ってもそれ以降使い道もないし、割れないように梱包してももうトランクに詰められないな…」と考えてしまい、結局100円ショップで売ってた小さな紙皿で代用することにしてしまった。うーん。

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*1:毛氈という字は読みづらくて覚えづらいね。

*2:かみしも。城内で老中とかが着てるやつ。

*3:そうらい。合掌、礼拝すること。ここに来て初めて知った言葉。

*4:てつお。お客さまの中に、美女でこういうハンドルネーム、というとこにグッときた方はいませんか?