honkyochiblog

さようなら、はてなグループ…

「ドーン・オブ・ザ・デッド」





「ドーン!」
「オブザデーッド!」
「ぶぁいぞんなわげで!」
「面白かったですね!」
「ヴむ!満腹だ!余は満足ぢゃ!」
「先生?」
「ん?」
「口の周りが赤いですが…」
「ああ。これは。ジャムだ」
「ああ」
ラズベリージャムだ。ボンヌママンのやつ」
「おいしいですよね」
「俺としたことがはしたない(と口元を拭う)」
「あと先生…?」
「(手を舐めながら)なんだ」
「目が白目なのは…カラーコンタクトですか?」
「そう。海外通販で買ったの」
「角膜を覆うタイプですね。実によく出来ています」
「眼科医で目のデータを計測してから発注するからピッタリだ」
「近くで見てもかなりゾンビッぽいです先生」
「フフン。神は細部に宿るからな」
(以下の会話はネタバレを含みます。というかほとんど全部解説してしまいます。ここまで読む暇があって2000円くらい持ってる人はとっとと劇場に走ってください。いいから行け!俺のことはいい!走るんだ!)


「じゃあ先生」
「おうよ」
「この際ですから最初っから逝ってしまおうかと」
「構わぬ。観てないのにこれ以上読む奴は地獄に道連れだ」
「はっ。ではさっそく」

地元病院に勤めるナース、アナ(サラ・ポーリー)は愛する夫と幸せな日々を過ごしていた。

「オープニング、タイトル前。病院です」
「こう書くと平和そうな描写があんのかと思うけど、この時点でもう、主人公が気付いてないだけでこの病院ダメなんだよな」
「何人も運び込まれてますね。でまあ勤務明けで車運転して家に帰って旦那と風呂で一発ヤッて寝ます」
サラ・ポーリーでかくなったよなー」
「『バロン』から見てますからねー」
「俺が言うのも何だが感無量だ」
「で、午前6時37分」
「そう午前6時37分!」

いつもの平穏な一日を迎えるはずの夜明け、二人は不審な気配に気づき目を覚ます。

「まず旦那が起きます」

ドアの向こうには隣の家の少女が立っていた。

「ボーッと突っ立ってるんだよな。寝巻き姿で。玄関の鍵開いてたのか?」
「旦那が女の子の口の周りの肉が無いことに気づいて駆け寄ります」

次の瞬間、少女は突然夫に襲いかかり、首筋に噛み付くではないか。

「いきなりガブッ!」
「主人公と旦那、必死で振りほどいて少女を廊下に投げますが」
「ガバッ!」
「すぐに起き上がってこっちに向かって全速力!」
「バタバタバタッ!」
「主人公慌ててドア閉めますが」
「バタン!」
911も繋がらず、旦那は血が止まらず死んでしまいます」
「ピューピューピューピュー!…ガクッ」
「が」
「…ガバッ!」
「やおら起き上がって主人公に襲いかかります」
「ピギィヤァ!」
「何とか車のキーだけ掴んだ主人公は風呂場に避難!」
「バタン!」
「でも」
バキン!」
「元旦那、頭突き一撃でドアに穴を!」
「ヤッベ!」
「ギリギリで何とか窓から脱出しますが!」
「ガーン」
「外はもう!」
「ノーッ」
「阿鼻叫喚の地獄絵図!」
「あちこちから火の手が上がり!地域の皆さんはお食事会の真っ最中!そこを救急車が人を轢いて走り去る!」
「しかしグズグズしてはいられない!」
「ギィャー!」
「元旦那キタ!主人公慌てて車に乗る!」
「ボガッ!」
「元旦那、車のフロントガラスをげんこつで破壊しようとしている!」
「パワーアーップ!」
「振り落としても走る車を裸足で追っかけてくる!」
「タタタタタタタ!」
「『ターミネーター』1&2をセットでお送りしております!」
「ドドドドドド!」
「あっ」
「スイーッ」
「元旦那は違う方向に走って行った!」
「ガブガブムシャムシャ!」
「手ごろなお相手を見つけたようだ。よかったよかった全然よくねー」
「ガツガツムシャムシャ
「ああもうどこもかしこも」
「キキーッドカーンパクパクムシャムシャ
「事故と爆発!襲撃!食事!」
ガチャガチャガチャッ!」
「しかし気を取られた隙に慌てた親父に車を奪われそうに!」
「キキーッゴバーンッ」
「あっ逃れようとした主人公思いっ切り車線変更」
「ドカン」
「木に衝突して気を失っちゃった!」
「コテッ」
「…」
「…」
「と…」
「ドドーン!」
「ここでタイトルバックですよ!」
「オブザデデーッド!」
「いやー」
「鼻血噴くかと思った」
「ここまでで10分弱ですか」
「夢のようなオープニングだ」
「車はオシャカで寝巻きに裸足」
「ここまで逆境な主人公久し振りに見てわらわは嬉しいぞ!」
「まったくです」

><

「でさあ。主人公が運転してる車を俯瞰でとらえたカットによー」
「はいはい。目の前で車が衝突爆発炎上するカットですね」
「の前に『ラクーン市(だか郡だか)は壊滅です…』って放送カブるじゃん」
「うろ覚えですな」
ラクーンって『バイオハザード』の舞台だろー」
「細かいネタを脚本家もまたーてか先生もー」
「あそこでもう『ああ信頼できるー』と思ったな」
「はや」
「朝になるまでの主人公の気づかなっぷりもお約束だ」
「ラジオは音楽に変えちゃったし。旦那はテレビで『サバイバー』見てるんですかね」
「全然サバイブ出来なかったけどな」
「結局みんな、自分の周囲数mに危険が近づいてくるまで、いや近づいてきても、事態を完全には認識出来ないものだということがよくわかります」
「家に入る前に唯一会ったのが隣の家の子供だ」
「ローラスケートで遊んでました」
「逃げ出す時に役立つ伏線かと思ってしまって不覚だ」
「『ジュラシックパーク2』じゃあるまいし」
ジェフ・ゴールドブラムの養女が『鉄棒の選手』って設定な」
「アホかと思いましたねあれは」
「やればいいってもんじゃない見本だ」
「でタイトルバック、なかなかかと。嫌〜な感じで」
「名前の字幕が血で、バシュッて滲んだようになる、文字通り血が滲むような出来だ」
「ええ。これまたカイル・クーパーだそうですよ」
「世界各地の暴動映像をリミックス」
「作品世界が我々の世界と地続きなことが強調されます」
日本のニュースが見たかったけど暴動ねーからなー」
「さて」

目が覚めると、アナは警官ケネスをはじめとする他の生存者たちと出会う。

「まず出会う警官役はヴィング・レイムス。頼りになりそうです」
「『極限状況下で出会いたい』ランキング上位入りは間違いないだろ、黒人警官」
「また有意義なようで無意味なランキングですねー」
「黒人の体力プラス、職業柄の銃の取り扱いの的確さにトラブル処理能力。トチ狂いさえしなきゃほぼ完璧じゃないか」
「ベタ褒めですね」
「いやお前、もしここでびしょ濡れの子犬を抱いたホストとかに出会ったらどうよ」
「サスペンス性は増しますね。意味もなく」
「出会えたのがショットガン構えた黒人警官で本当に良かった。特殊部隊の隊員とその辺で出会う確率はさすがに低いだろうしな。アメリカでも」
「で、その数分後に、気弱そうな電器屋さん、若い黒人、妊娠中のロシア人女性と出会います」

販売員のマイケル、元売人のアンドレとその妻ルダ。

「でも銃持ってるのは元チンピラだけ。まだまだ不安だ」
「ロシア人奥さんは腹ボテです」
「パニック映画の基本、それが妊婦」
「で、『避難しよう』『どこへ?』『そこさ』と」
「目の前ショッピングモ━━━━(゜∀゜)━━━━ル!!!!」
「感涙ものの素早さです!」

5人はショッピングモールへ逃げ込む。

「店のショーウィンドウを展示品の便器で破壊して侵入します」
「そのカットから始まる省略演出だ」
「外でやいのやいのは語らないんですね。どうとでも盛り上げられそうですが」
「な」
「シーンとしたモール内の描写、オリジナルの『ゾンビ』っぽくて良かったですね」
「全部一から作ったセットとは見抜けなんだ。どう見てもロケ」
「美術さんいい腕です」

モールの中にもゾンビは潜伏しており、ケネスとマイケルが倒すものの、そのさなかにルダが傷を負ってしまう。

「ここら辺はもう嫌な感じの緊張感に溢れますね。安全を確保するまでは当然ですが」
「この辺ゲームの『バイオハザード』チックだよな。ドア開けたらいそうだ…いたーっ!ていう」
「電器屋さん、バールのようなものから木製の…何かクリケットかゲートボールのスティックのようなもの…に持ち替えます」
「試し振りとかしてな」
「でまあ案の定襲われまして、そいつを叩いて折れたスティックを更に顎の下から脳天に突き刺して倒します」
「ぶしゅっ」
「その頃警官たちも襲われます。揉みあいになってしまってショットガンがなかなか撃てません」
「散弾はこういう時やっかいだ」
「噴水で何とか動きを止めます。脳を破壊したわけではないようです」
「でも中枢を破壊したんだろうな。バグッたみたいにバタバタしてる」
「ロシア人妊婦さんが噛まれてしまってゾンビ化フラグ立ちました」

エレベーターで2階に上がった一行を出迎えたのは、銃を構えたモールの警備員たちだった。リーダーのCJ、バート、そして新入りのテリー。

「先客がいました。このモールの警備員」
「ヒゲ、バカ、若造」
「実に考えさせられる組み合わせですね」
「男子中学生の成分『エロ、バカ、純情』を三人の人間に分離させた感じだ。純情はごく微量なので主張も弱めだ」

彼らは、無情にもアナたちを追い返そうとする。
何とかモールに留まれるようCJを説得したものの、ケネスとアンドレは銃を取り上げられてしまう。しかもCJは先のことは何も考えていなかった。

「武装レベルがガタ落ちしてしまいます」
「ヒゲとバカは主人公見て絶対ヤラしいこと考えたよな」
「王様気分でね。中学生なら当然ですね」

テレビではこの異変が世界的なものであり、生存者に軍のパスター基地に集結するよう伝えていた。

「はいここ大事!オリジナル版の皆さんのお出ましだ!正座しろ!」
トム・サヴィーニ御大のノリの良さが光りますね」
「『おい!そこのピクピクしている女の脳天を吹き飛ばせ!』」
「暴走族のリーダーから保安官へと華麗な転身」
「『フロム・ダスク・ティル・ドーン』での役名はセックスマシーン。面白いオッサンだ」
「あの時は股間に銃がついてましたね」

マイケルの提案で屋上に生存者の存在を示す言葉を書くことになった。

「ペンキを使ってSOSを書きます」
「何というか、出来ればしないで済ませたい作業だよな、人生で」
「ゾンビになればしないで済みますね」
「ぞれもぞうだぁー」
「はいここで、モールからちょっと離れた位置にあるアンディ銃砲店の主人、アンディさんが登場します。登場というか、お互い屋上にいるの気づくだけで、移動や物の受け渡しはおろか会話すら軽く不可能な感じですが」
「しかし銃砲店。この状況ならマイケル・ムーアだって行きたくてたまらんよな」
「ええ。『ああショッピングモールから撤退させるんじゃなかったー!』とか。あれはKマートでしたっけ」
「しかし何度褒めても褒めたりない絶妙の距離だ」

飛来した軍用ヘリは、期待に反して飛び去っていった。落胆する一同。

「パスター基地行きなのかな」
「さっきのテレビニュースで全滅フラグ立ってますから落胆しなくてもいいんですけどね」
「そんなんまだ知る由もないからな」

CJによって軟禁される5人。こうして最初の一日が終わった。

「で」
「夜が明けるとテレビやってません」
「みんな寝ちゃってテレビ局全滅シーン見逃したな」
「DVDには付きますかね」

すると一台のトラックがモールを目指して走ってきた。中には明らかに人間が乗っている。

「追っかけてくるゾンビを助手席の人がパンパン銃で撃ちながらトラックがやってきます」
「助手席にいんのはおばはんか?強いおばはん燃えるー」

例によって無視しようとするCJにアナは激しく抗議した。

「するとヒゲに銃を向けられてしまいます」
「まあ入れるかどうかでひと揉めするのは基本だな」
「ここを乗り切れるかどうかが物語の大きな分かれ目ですが」

マイケルがバートの銃を奪い、テリーがアナたちの側についたことで、形勢は逆転、CJとバートは閉じ込められる破目になってしまった。

「軽く乗り切れました」
「さもありなん」
「まず運転席から2人降りてきまして」

トラックには8人の生存者がいた。

「荷台にあと6人いると言われます」
「あっさり中に入ってるが」
「ええノヴェライズじゃもう少し手間取ります。
『あと6人いる』言われた電器屋さんと元チンピラが出て行って、運転席に座って頭から搬入口に突っ込んでたトラックをバックさせ、ゾンビを蹴散らしながら転回してバックで搬入口に入れ直すんです。まあこの行為で誰も噛まれたりしないんでカットされたのかも」

スティーブ、フランクと娘のニコール、グレン、タッカー、ノーマ、モニカと重傷の中年の女性。

「金持ち野郎、父と娘、地味なおっさん、運転手とその相方のおばはん、セクシーな金髪、死にかかったデブ女」
「一気に8人増員しまして」

彼らは絶望的な情報をもたらした。パスター基地が全滅したというのだ。弟と基地で再会するつもりだったケネスには耐えられない知らせだった。

「トラック借りようとしてた警官は落ち込みます」

重傷の中年の女性はアナたちの前で息絶え

「ここで主人公が看護婦だってのが効いてきます」
「怪我人に近づかざるを得んからな」
「ここに来るまでゾンビ化する因果関係がわかってないんですよね」
「作品世界に『ゾンビ』という先行概念もないしな」
「あるのが『バタリアン』ですね」

ゾンビ化して襲いかかる。

「観客としても来るのは分かってるんですが」
「どたどたどたっ」
「実に嫌な近づき方をしますよね。しかしこれに噛まれるのは嫌だ」
「うぇあぅあっ」
「主人公、火掻き棒を咄嗟に構え」
「ぶすっ」
「これを倒します」
「『避ける』って考えがないんだよな」
「真っ直ぐに進んで刺さりました」
「学習も予測も執着も何もないよな」
「冒頭で嫌というほど分かりましたよね」
「車で逃げる主人公をあっさり諦め…いや、諦めたとかそういうんでもないんだよなあれ。なんだ、そう、磁石みたいな感じ」
「磁石」
「自ら動いて鉄にくっつく磁石みたいな」
「ははあ」
「そうこうするうち鉄も磁力を帯びて」
「また鉄を追い求めると」

生存者たちは苦渋の選択を迫られることになった。

「ともあれこれで、『噛まれたら駄目』ということが分かりました」
「『そんなわけなんで噛まれた人は申し出てくださーい』」
「いやー、実に言いづらいですよね」
「でももう言っちゃってる人が」

その決断の対象となったのはフランクだった。

「娘と一緒にいた父親です」
「いい人そうなのがまたキツい」
「しかし作品内ルールは厳格です」
「どんどん土気色に」
「なすすべもありません」
「しかしここ、名シーンだと思うがどうか」
「『バタリアン』における焼却炉のシーンに匹敵しますかね」
「結婚指輪を指から外すとこな」
「この場面の父親もいいこと言います」
ゾンビ映画でウルッとくるとは思わなんだ」

それでもモールにはしばし平穏な時間が訪れていた。

「役者も揃ったところでようやくお待ちかねの」
「このためにショッピングモールに来たんだよシ----------ン!」
「が始まります。まずは」

ケネスは銃砲店で一人篭城しているアンディとホワイトボードを介して友情を育んでいた。

「警官と銃砲店の人がぼちぼち仲良くなっていきます。
 トラックのグループが来た後、銃砲店の人が『状況を教えてくれ』と聞いてきて、警官が『基地は全滅。助けは来ない』と返すと『で、悪い方のニュースは?』と返すあたりからですかね」
「それにしてもホワイトボードでの会話は視覚的でいい」
「ゾンビ化した父親にとどめを刺す暗いシーンから一転、皆でひととき、物質的には贅沢な生活を楽しみます」
ハイヒールを履いてみてるオヤジがいる」
「皆さん『ショッピングモールで贅沢しまくりシーンがなきゃゾンビ映画じゃない』ってぐらいお待ちかねのシーンですが、これぞまさに現実逃避の最たるものですよね。壁一枚向こうは地獄なわけで」
「映画館に現実逃避しに来た我々が観る映画の中の人もまた現実逃避してるというのがシビれるのだ」
「ふむ」
「でもってここでハタと思うわけだ」
「ほう」
「『映画館の外も地獄になってたりして』」
「おおー」
「阿鼻叫喚のな」
「出たらコマ劇前ですから何か嫌なリアリティーが」

モール内が停電になり、ケネス達は発電設備を直しに地下に行く。

「さあさあ次なる困難の幕開けです」
「まあ、そうなるよな」
「電気がないとなんも出来ませんからやるしかありません」

そこで生き延びていた犬を拾い、

「新キャラ、というかまあ新入りですか、犬登場です」
「どうやって生きてたんだろうな」

バートはゾンビに襲われる。

「成り行きで懐中電灯しか持たせてもらえなかった警備員トリオのバカとはここでお別れです」
「とんでもないポカをやってもらいたかった気もするな」
「何かしでかしそうではありましたね」
「何か大事な物を持っとけ言われてまんまとどっかに置き忘れるとか」
「見当違いな行動をとるとか」
「(ノベライズ見ながら)お」
「どうしました?」
「おおおお」
「なんですかー」
「読むぞ」

「うわああ!!」
バートは必死で体をねじると、物体を床に振り落とした。懐中電灯の中にその姿を認めた一行は息を呑んだ。
足のない死者だった。
すぐにとどめを刺そうとケネスが銃を向けたが、相手は両腕を立ててくるりと身をひるがえし、あっという間に暗がりに逃げ込んでしまった。

「…」
「このゾンビの名前ってたぶん」
「!」
「ケニ…」
「(慌てて先生の口を押さえ)わーっ!」
「むぐぐ」
「しーっ!しーっ!」
「(その手に噛みつく)がぶっ」
「ぎゃっ」
「ガツガツムシャムシャ
「ぬがっががががが」






「ぶふー」
「まあそんなかんじで犠牲者は出しつつ電気はどうにかしましたが…」
「おぎゃあおぎゃあ」
「ロシア人奥さんがえらいことになってしまいました」
「ブレインデーッド」
「このへんの件はまあおぞましくも見てのお楽しみ、って感じですかね」
「まあ、そう、なるかなって感じだ。おばはんの反応といい」

ルダの出産の結果を前にして、一同は否応なく未来を考えざるを得なかった。

「2ちゃんにあった意見ですけど、『出産と共に奥さんは死んでゾンビ化するんだけど、赤ちゃんはギリギリ無事で、クライマックス、みんなで赤ちゃん守り抜きながら壮絶に死んでいくってのも熱くないか』ってのが」
「傷の程度によるが、まあそれでも成立するような」
「しかし子供キャラに容赦ない映画ですね」

そんな時、スティーブがマリーナにクルーザーを持っていると言う。

「でかした金持ち!褒めてつかわす!」
「こういう状況下で今さら金があってもどうしようもないですからね。物を言うのはストックの量と質です」

モールの送迎用のバスを改造してマリーナまで脱出し、クルーザーで湖の孤島を探す。これがアナたちの計画だった。

「不安要素も多々ありますが、とにもかくにも目標が」
「正直、『湖の孤島』って場所は盲点だった」
「湖までどれくらいの距離かが鍵ですか」
「表はなんか野外コンサート状態を通り越して社会主義国家の崩壊状態になってっからなー」
「熱気に溢れてて、あんまり腐ってませんよね。死んでるのに」
「10日もすりゃぐちょんぐちょんになりそうなもんだがな」

着々と脱出準備は進んでいく。

「バスの大改造が始まります」
「ふははは」
「しかしつくづく前向きですね!アメリカ人は!」
「屈指の『燃えるけどあったま悪っ!』シーンだ!」
「国民性ですかね?」
「『デスレース2000年』!」
「日本人だったら、歯とか描きませんよね?」
「その場にあるものを組み合わせることの大切さを訴える!『特攻野郎Aチーム』!」
「溶接技術は大事です!」
「そう!射撃技術と溶接技術の大切さを訴える『エイリアン2』!」
「脚本家と飲みに行けますね!英語なぞ喋れんでも!」

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