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「お見舞い篇」

「病室に入ってすぐ、様子がおかしいことに気付いたんです。なんか鼻にチューブとか入れられてて、やせ細って一回りくらい小さくなって、明らかに昏睡状態なんですよ。もう顔とか別人みたいに骨と皮だけで。あの立派な髭もなくて。俺もう泣きそうですよ。足の骨を折っただけで、たった入院一週間で、人間こんなになってしまうのかと。軽く走馬灯回転ですよ。でもね、そこで気付いたんです。なんか、よく考えると状況が全部おかしいんですよ。腑に落ちないんです。違和感があるんです。何よりおかしいのは名札ですね。別の人の名前が書いてあるんですよ。別人じゃねえか!病室移動したのかよ!看護婦さん改め看護師さん!僕の本当の祖父はどこにいるんですか!僕らはどこから来て、どこに行ったらいいんですか!ああここですかどうも!」
「え?ああなんか元気でしたよ。俺が入ったときは丁度シビン使ってたとこで。急に入ってくるから途中で止まっちゃったって。一日一回若くて綺麗な看護士さんが体拭いてくれるのが嬉し恥ずかしなんでもっと年増希望だって。さすが江戸っ子というか何と言うか。いきなりチェンジ希望かよ。だったら俺が拭いてもらうっちゅう話ですよ」
「でなんかね、手術の時、麻酔打つじゃないすか。そん時なんか、髭剃らなきゃいけないって医者が言ってるらしいんですよ。本人それが嫌で嫌で。ああでも俺も疑問だな。『50センチも離れてるじゃねえか』って確かにそうだ。因果関係が知りてえな、確かに。口の周りと大腿骨の。最悪、せっかく蓄えた自慢の髭が全部無くなっちゃって孫の結婚式に出ることに。どうなるんすかね」