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「鬼龍院花子の生涯」

面白かった。
そうそう、夏目雅子の役名は花子じゃなくて松恵で、花子ってすごい脇役でね。演じてる女優もこれ以外で見ないしで、このタイトルはどうにも不思議。まあ養女としてもらわれてきた賢く綺麗な松恵と、後から妾が産んだ実の娘ながら内面はもちろん外見もバカな花子の対比で、というのは分かるんだけど。あと原作者の宮尾登美子が「生涯」というタイトルがどうしてもつけたくて、生まれてから死ぬまでが(一応でも)描かれる人物が花子しかいなかったというのもあるのかもしれないね。まあわかりようもないけどね。
「派手な着物来た女が取っ組み合って泥だらけになるのが見せ場なんでしょ?w」とか言われちゃうんだろうけど、それだけじゃねえよ!ってわけで。でも岩下志麻夏木マリと「見てるだけで面白く、なんだか満足できる女優」が揃ってるのは心強いよね。夏目雅子夏木マリもどっちも脱ぐしでありがとうございますありがとうございます。志麻姐さんも取っ組み合いに太腿見せとかなり頑張ってます。あと夏目雅子の子供時代を演じる仙道敦子、けなげでかわいいよね。成長後と並べて違和感がないのも大事。
仲代達矢演じる侠客、鬼龍院政五郎が(東映のヤクザにありがちな)理不尽なキャラでね。まあ理不尽なヤクザは「仁義の墓場」しかり「シャブ極道」しかりで映画的に面白い動きをするからね。この人がちゃんとしてればこうはならないというか、こうじゃなかったら話が全然進まないというかで、そんな鬼政と彼に振り回されまくる人々(ほぼ全員殺されるか野垂れ死に)の生涯、が本筋なわけです。殴り込みに行こうとする鬼政の子分を一網打尽にしようとする夏木マリ側の罠が豪快すぎて笑った。あと腸チフスになった鬼政の妻・岩下志麻を必死で看病する夏目雅子、という場面は「自宅のオンボロな部屋(のセット)でひとりで看病、朦朧とした意識のなか化粧をしあぐらをかいて(過去を回想して)三味線を弾く志麻」という流れがどうもコントっぽく見えてきて、凄絶な場面なのに笑ってしまった。
あの有名な、葬式で「なめたらいかんぜよ!」と啖呵を切る夏目雅子は、やはり震えるほど素晴らしいけど、ただ惜しむらくは、その場が自分らと関わってしまった(なにしろ「松恵さんと結婚したいんですけど…」と言っただけで鬼政に小指を詰めさせられて結局駆け落ちし、「…結婚を正式に認めてもらおうかな…」ともう一度実家に行っただけで敵の子分に腹を刺される)がために非業の死を遂げた内縁の夫の葬式の場だってことでね。そりゃ家族はちょっとは文句言いたいよね。敵側に乗り込んでいってのそのセリフなら(見る前は絶対そうだと思ってた)すごいカタルシスあるだけに。「こうやって理不尽な血というものは受け継がれていくのか!」と感心すらしたけども。

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