レイアウトというか見た目はさすがに完璧でえらいこと格好良いが、オリジナルというかスウェーデン版からの改変点のそこかしこに不満を覚えてしまう。いかなフィンチャーといえど、やはりリメイクは難しいというか。どうせ北欧ロケすんならオリジナル企画で実録もの、そうウィキリークスの映画とか作ってた方が…ジャスティン・ティンバーレイク主演とかでさ…。
で、スウェーデン版を観たときの感想を読み返してみたんだけど、出だしからミカエルは半年後に収監される予定とか、境遇がもっとギリギリなんだよね。賠償金で貯金がなくなっちゃうよクヨクヨ程度じゃなくて。その半年の間にこれを調べてくれと依頼を受けるんだよね。その要素、今回なかったよね？いや、ここはまあ別にいいとしても、リスベットがミカエルと合流するまでの闘いの日々も何か、ちょっとずつ、マイルドになってる気がする。具体的にどこよって言えば、それはあれを咥えさせられるとこや、お返しにぶち込むとこみたいな、「…実際にはやってないなこれ…」っていうとこ。いや、そりゃもちろんやってないんだけど、いかにもやってんじゃないかっていうギリギリを追求してほしいじゃないですか。一事が万事、全てがするするっと軽快に流れていて、あまり腹に残っていかない。アプリ上で何度も繰り返しコマ送りされる画像などにも顕著なように。
そんなわけでまあ、順番に。
予告→これはなんとなくダヴィンチコード風？のスウェーデン版（の日本での予告）より、ハッタリきかせたアメリカ版特報のがいい感じ。曲の出来はわかりませんが！
ティーザーだから車をバイクで追うカット、リスベットがヘルメットかぶってるけど、本編じゃあ顔を合成してメットなしにしたんだってね。知ってて観たけど全然わからなかった。
オープニング→優。不気味で不吉で、ダークな007オープニング調。とっととフィンチャーもノーランもマシュー・ボーンも自力で資金集めて007撮れ。本家は苦しいんだ！
役者→良。ステラン・スカルスガルドが登場時から怪しいのはどうなんだっていう。あ、クリストファー・プラマーが二作続けて鼻にチューブ入れてる役だな。ただルーニー・マーラのリスベットは「そういう格好の人」にとどまっていて、ノオミ・ラパスのリスベットの「そういう生き方の人」っぷりには敵わないな、と思った。なんだろ、あの前髪ぱっつんぶりがそう思わせたのかもしれない。
音響→優。床のワックスがけ機の音とか、ベタだけどそれがまたよし。
美術→優。スウェーデン版のスタッフから何か貸してもらったりはしてないのかな、とちょっと思ったw ないだろうけど
猫→ニャー。あんな過酷な環境にいる猫の割に毛並みツヤツヤだったな
二人が出会う前→不可。リスベットからのヒントメールがないとか！あそこすごい大事なとこじゃないか。なぜ変えるか
合流してから→あの小屋で一緒に寝泊まりすることになって初めてセックスするまでのくだりはスウェーデン版のがずっとよかった。あのドライさに痺れたんだった。
モザイク（ここだけ日本側のせい）→これでいこうと決めた者を吊るし上げていいレベル。こんなザマでブルーレイとか買う気になるか。救いようがない商売下手。バカならまだしも、商売の邪魔はダメだろ。
写真解析→不可。そんな流れるように描写されても頭の中で「その瞬間」が立ち上がらない。スウェーデン版見たときこのくだりにえらく感激したのに、なんだよーとなった。
「処理場」で真相明かされる場面→不可。写真の陳列が完全にないとか…。いやいや、何やってんのか。描かないことにより想像させる手法？まさか
エンヤ→笑。ここだけ声出して笑った。癒されるー殺されるー（素早く繰り返す）
明かされ後→不可。冗長すぎ。それをやるならやるで序盤からの組み方ってもんがあるだろうよと。
まとめ→オリジナルの貫禄勝ち
重要なバックボーンの説明をセリフで済ます（リスベットが父親へ火をつけた回想場面がないとか…）とか日本の民放のダメなドラマじゃないんだからさ…
あと、失踪事件を追ううちに明らかになる女性大量殺人事件、スウェーデン版だと「まあ、さすがに表面化したろうな…あの邸宅に警察来てたし…」と思えたけど、こっちではそういう風には全然思えないのがすごく気になった。真相が（観客に）明らかになって失踪事件が解決した後、ヘンリック・ヴァンゲルもミカエルも落ち着いてヴァンネルストレムがらみのこと話してるしさ。いやいやいや、ヴァンゲルグループが根底から揺らぐくらいの超絶大事件じゃないですか。それスルーでいいのかよ。真犯人が死ねばよしって話じゃないだろ。ていうかそれ、女性を憎む男たちとか、根底のテーマに関わる要素なんじゃないの？それをここまでおざなりにするとか、単なるおどろおどろしい雰囲気付けというか、盛り上げ要素のひとつに落とす行為に思えるけど、どうなのかと。だいたいそんなようなことでモヤモヤした。
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