honkyochiblog

さようなら、はてなグループ…

「4デイズ」

そんなこんなで微妙な表情でシネパトスの階段に1時間ほど座り込んだりして時間を潰して、いやいや、と気を取り直して公開終了が迫るこれを鑑賞…
…したらすっごい興奮!こりゃすげえ!テンションもV字回復せざるを得ない、参りましたの超絶傑作。鑑賞後、変なテンションになっちゃって駅への道のりでもニヤニヤしっぱなし。もう明らかに不審人物。
いや最初はね、一日使って『スリーデイズ』『4デイズ』『5デイズ』連続鑑賞して『6デイズ7ナイツ』でも借りて帰って観てデイズ映画祭をキメようと思ってたんだよね。でもやめて正解、これ観たら「はい次!」ってならないわ。主催者自ら映画祭の中止声明を出すとこだった。観るなら予告編などもパスの方向でぜひ。
まあお話は単純で、『24』とかでよくある、「爆弾を仕掛けた容疑者から設置場所を聞き出せ!どんな手を使ってでもだ!」っていうときの、まさにその「どんな手でも使う」現場での話で、「どんな手でも」ってのは(自白剤とかは意識が朦朧とするばかりなんで)まあ拷問なんだけども、今まで『ソウ SAW』から『ホステル』くらいまでで「そこまでされる筋合いのない人が死ぬ目に合わされて逃れようと必死でもがく、命をかけたゲームみたいなんはもういいですわ…」となってたところにヒョイッとこれが出てきたもんでその感激たるや!っていうね。これこれ、こういう需要と供給の完全一致ですよ、観たかったのは。「そこまでされるだけのことはある人が、拷問を受ける気まんまんで現れて、社会から完全に隔絶された環境で、自分の全てと大量殺戮を天秤にかけつつ完璧な勝利を我が物にしようとする」という、もう何がなんだかっていう完全に突き抜けた世界。こんな、されるがままの圧倒的に不利な立場に置かれて、存在すらも国家から消されかかってる冴えない風貌のおっさんが、実はそこにいる誰よりも残虐で、最重要人物になってるっていうパラドキシカルな構造にクラクラする。『リトルショップ・オブ・ホラーズ』のスティーブ・マーティン演じるドSの歯科医とビル・マーレイ演じるドMの患者の対決場面とかも思い出す。話が進むにつれ暗黒と混沌の度合いを増していくのも最高すぎる。鑑賞姿勢はずっと「うわあ…」って感じで推移するんだけど、あまりのことに最後には笑いすら洩れてくる。いやこれはとんでもない、とんでもない代物だ。あまりの突き抜け加減にほとんどの人はドン引きなんだけど、少数のおかしな人だけ大喜びという点でクローネンバーグの「クラッシュ」とかにも通じる。
隠密拷問人を演じるサミュエル・L・ジャクソンも、あくまでも良識や人間性を失うまいと踏ん張る役のキャリー=アン・モスも良いけど、やはり何より延々と拷問を受け続けるマイケル・シーンが凄い。拷問受ける役って無名な若い役者の場合が多いけど、やはりそれなりの人を連れてくると凄みが違う。
(※以降ややネタバレ&やや不謹慎なため反転。観た人のみ)クライマックスで、拘束を解かれたマイケル・シーンが銃を奪って騒然となるとき、サミュエルLが周囲に「大丈夫だ!指はもう無い!(俺が全部切り落としたから!)」と言ってもらいたかったなー。そんでマイケル・シーンも根性でちょこっと残った親指の付け根をトリガーガードに無理やり突っ込んで引き金を引く。そこまでやられたら完全に死んでた。