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「デンデラ」

企画力と実行力はあるけど構成力とアクションシーン演出力およびクマ力*1にいささか難がある制作陣のためにこうなった*2ものの、それを補って余りある女優力がすげー!具体的に言うと草笛光子すげー!一人芝居から掛け合いまで、出番の全部が面白い。浅丘ルリ子も不意に「ああ、綺麗だな」という瞬間があったし、何より脚本の穴を埋めさせてて*3グッジョブすぎる。そして倍賞美津子もかっこよかった!

木彫りのアイパッチかっけー!何か一人だけちょっとゴスっぽいのもすげー!だから役柄ももっと荒々しくていいのに!片腕義手、それも毒手!とかでいいのに!穏健派は倍賞千恵子にやってもらってそれが最初のクマの襲撃で死んで姉の復讐を誓うとかでいいのに!そんなわけで思い返すといろいろ面白いので個人的には1000円はお得。つっか基本的に邦画は1000円でいいんじゃないかという話も…あ、あと何気に死体造形力もなかなかよかった(人体破壊の瞬間の描写もがんばってほしかった)。それに衣装とか美術とかはえらくがんばってた。
いや本当、捨てられた老婆だけの村の創始者たるメイ(草笛光子)の苦闘を描くデンデラビギニングパートが異常に面白いんだよね。0から何かを立ち上げる話スキーにはたまらんかったよ。草笛光子、仕草や唸り声がいちいち面白くて、木の幹から虫か何かをむしってあむあむと食う姿とか、もはやキュートですらあって。そんな彼女が苦労のすえに捨てられた山奥のもっと奥に拠点を構え、同じように捨てられた老人のうち女性だけを助け続けて秘密のババアゾーンを構築し三十年、ババアたちを心酔させ戦闘訓練を施し、狙うは自分らを切り捨てた村への、男社会への復讐!そう、メイはババア版タイラー・ダーデンデンデラのことは誰にも言うな!うむ、思い返すと燃えてくる!百歳になっても反抗期!厨二病は不知の病!あとはこんなチャレンジ精神に溢れまくった企画に資金が集まるかどうかだな!資金力がクマ力に直結しているのだから!
というわけで…
○武器のバリエーションを死ぬ程考え出す。腕力に頼らない、遠隔攻撃用を中心に。
○アクション演出で鳴らした演出家を呼んでくる。「飛んだり跳ねたりできないから、アクションは…」みたいな発想を捨てる。そういうことではない。
○恐怖演出で鳴らした監督も呼んでくる。
○物語の流れを途絶えさせないようにする。一旦動き始めたらゆっくりでも止まらないように。カユ(浅丘ルリ子)が助けられてすぐ、デンデラの婆たちは新入りのカユには明かされないある「計画」のため隊列を組んで移動し始め、ここに残ると言う「意気地なし」たちが謎のクマに襲われ、カユも否も応もなく同行する羽目に…みたいな感じの出だし。
○体力の低下を踏まえて、少しずつ移動してはビバークする、の繰り返し。
○別の地域からマタギがやってきていて、共闘しかけるが、クマとの戦闘で死ぬ。
○意識が朦朧としたときに見た幻覚、ということで全員若い頃に戻ってる場面を挿入するなどして「どの場面でも絵面が一緒だよな…」と思わせない工夫をする。ルリ子役は特にがんばって目の大きい少女を探す。
○どんどんやられていくんだけど、それぞれの死闘が「あそこに、銃は壊れてるけど、銃弾の残りがあって…」とか「ここに燃料の入った樽が冷たい水に沈んでて…」みたいな点を生んでいて、それがクライマックスで主人公の閃きで全部結実して線になり、炸裂する。
○死ぬ前にいちいち「デンデラ」と言わないようにする。草笛光子だけ許す。漫画「グラゼニ」や朝ドラ「だんだん」もそう思ったけど、タイトルになってる言葉を連発するのってどうかと思うんだよね。手前味噌すぎると。絶対、ここぞというとき一回限りの方が燃える。
○ラストは死んだ人も全員生き返って綺麗な服になって歌を歌う。草笛光子倍賞美津子はデュエットする。いつの間にか淡路恵子もいる。松竹歌劇団の底力、見せてくれる!

*1:観客に「このクマは本物だわ…」と思わせる力。

*2:「1000円(興行)になった理由がよくわかったよー…」という声が帰り際の前の客から聞こえてきた。

*3:http://www.tokyo-np.co.jp/article/entertainment/news/CK2011062102000052.html 原作にあるのか知らんけどどうなんだよ元のセリフ。