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トム・ロブ・スミス「チャイルド44」

チャイルド44 下巻 (新潮文庫)チャイルド44 上巻 (新潮文庫)
評判通り。おすすめ。
「粛清・処刑は当たり前!有罪率は100%!」なスターリン体制下のソ連で、「人類の理想郷たる共産主義国家に存在しない」はずの連続殺人鬼を、何の権限もないのに追う(権限どころか自由もなく、見つかったら即処刑、何もしなくてもやっぱり処刑!)主人公、というあまりの逆境っぷりに痺れる。どんだけハラハラさせる気だ。
「○月○日」という章立てで進むわけだけど、最後の一行で不意に「おお」と唸ることが何度もあって、「おお、これこれ、こういうのゾクゾクする!わかってるね!」と嬉しくなる。
映画化はリドリー・スコットもいいけど、ポール・グリーングラスに例によって「もう駄目だ、死ぬ」感満点の超ドキュメンタリータッチでやってもらいたい気もする。
(ネタバレを含みます)
キャラクターの書き込みもいい。「人の名前が覚えられない」なんていう「え、どうなのそれ。俺かよ。いやあんた主人公でしょ?」というハンデを背負う(しかしそれが何故なのかが回収されたときの納得感は格別)主人公も、地味に登場しておいてみるみるうちにキャラが立ってくる奥さんも、「一体何様のつもりなんだよ!」という邪魔者役も、出番の全てをセクハラに賭ける中年オヤジも、無骨極まりない田舎の警察署長も、主人公のせいでドミノ倒しのように運命が激変する多くの皆さんも、全員が「こういう状況下で人はこうなるのか」「いやしかし、それでも何か、潰えないものがあるのではないか」という、生命力に溢れている。