honkyochiblog

さようなら、はてなグループ…

「初恋」

(例えば「3億円事件の実行犯はぁぉぃ」みたいな、取り返しのつかないネタバレを含みます)


(いや、でもポスターにあるし)


(そもそもそこが引きなんだけどね)


「いやあ、いい引きです。久し振りに日本映画で設定だけで親指を立てるものが出ました」
宮崎あおいが実行犯」
「ありがとうございます。かなり、その設定だけで満足満腹満頭です」
「下手すりゃ観る前に満足するくらい」
「実話を題材にした『実は…』物の中でもかなりのヒットです」
「『実は沖田総司は女』な『幕末純情伝』とか、歴史物・時代劇にはかなり色々ある気がします。今すぐにこれ以外が出てきませんが」
「海外で最近なら『ジェヴォーダンの獣』『フロム・ヘル』とか真っ先に思い出します。海外では『実は女』はあまりウケないんでしょうか」
「原作ありか。天才的な着想だな。主人公に自分の名前つけててもいいや。自伝ならなお結構。すごい人生だ」
殊能将之氏も日記で書いてましたが、この作品の宮崎あおい、『ドレミファ娘の血は騒ぐ』の頃の洞口依子にそっくりです」
「特に冒頭あたりの警察署の中のシーンがそっくり」

「あえて似せようとしてますよね?というくらい」
宮粼あおい、が正しいんだ。知らなんだ」
「まあ閑話休題
「そして本題」
「始まってしばらくはかなりスリリングです」
「サスペンスという意味ではなく、『だ、大丈夫なんかこの映画』という意味で」
「セリフがところどころありきたりで」
「具体的に言うと『時代が何かを求めて蠢いていた』ってナレーションとか『大人になんかなりたくない』というセリフとか」
「ひねりがなさすぎやしないかと。いくら過去の話とはいえ」
「もちろん、現代風な言葉遣いを出すのは絶対ダメだけど」
「そしてジャズ喫茶に集まるフーテンどもが紹介される流れも不安を呼びます」
「役割などを出してくるので。『あいつはリーダー』『あいつはムードメーカー』みたいな」
「『え、え、別にこいつらがチーム組んで事件起こすわけじゃないでしょ?』とね」
「杞憂なんですけどね。むしろまんまと乗せられてる」
「基本的に60年代に思い入れはない訳ですよ。団塊ジュニアとしてはね」
「リアルタイムで体験してないとかじゃなく、もはや意地でね」
「ノスタルジーなんか絶対に感じねえからなと」
「そこに背景として学生運動が入ってきた日にゃあね」
「でも、この話にはそれが不可欠」
「事件の動機付けの重要な要素を占めていられては」
「わかりました、それでお願いします、と」
「とまあ時代背景の描写も終わり」
宮崎あおい演じる主人公、みすずがバイクに興味を持ち」
「物語が動き始めます」
「ここがまあ定番ですけど、やっぱりいいんですよ」
「今までずっとぽてぽて歩いていた人が始めて運転する乗り物」
「これ!これですよ!映画は最初から乗り物を写し、最初から走る人をとらえていたんです!」
「最初から疾走とともにあったのです!」
「主犯格である岸の言う、宮崎あおいにやらせる理由付けもまあ、アリかな、と」
「こういうのはそこそこ論理的なのが作品内で提示されちゃえば問題ないんですよね」
「あくまでそこそこ、で十分。あんまりやってもうっとおしい」
「岸を演じる役者も良かったですね。地味で、昔の人みたいで」
「ああ、こういう顔、昔の邦画で見たな、と」
「過去を舞台にした話であんまりに現代的な顔立ちの役者が出てくるのが嫌で」
「ああ、新宿の街並み、美術さん頑張っていました。かなり」
「その代わり、当時の映像(本物)をテレビ等で(リアルタイムとして)見ている人物、という絵を全く出しません」
「主人公が直接関係する人以外の人物だけが出てくるシーンもありません」
「あくまで、外の世界は語られない」
「極めてパーソナルな物語」
「そこに3億円事件を持ってきたのが慧眼」
「だから自分も観に行ったわけです」
「こういうホラがいかに貴重かと」
「それを考えると、重箱の隅つつくように文句言うなんてとてもとても」
「いい『引き』を思いついてから、重箱を作ってから言うべきですよね」
「とはいえとはいえひとつだけ!声は!声だけは何か工夫するべきだったかと!」
「どう聞いても女の子の声ですよ!格好が完璧だとなおさら!」
「いいんだけどね…」
「しかし小嶺麗奈の脱ぎには、うまく言えないけど、すごく切ないものを感じる」
「あと、パンフによれば、『後に芥川賞獲って夭折する、ジャズ喫茶の常連のあいつ』のモデルは中上健次
「へええ」